革に咲く桜の花

桜染

桜染に使う枝は、春の少し前、花が咲く直前のもの。化学染料は一切使わず、山桜、ソメイヨシノなどを中心に、剪定された小枝を集め、桜の茶色の樹皮を煮つめて取出した赤い色の染液で、一つ一つ丁寧に手作業又は、タイコで染めます。環境にも優しいタンニンレザー等をタイコ染色や刷毛染で染め上げている為、柔らかい風合いの優しい色が特徴です。

桜の部位によって色味が変わる

桜の木に含まれる色素はピンクだけではありません。黄色やベージュ、灰、さまざまな色が含まれています。草木で染めるには、金属質(銀イオン)の成分で色を定着させる「媒染」をする必要があります。染めの色は媒染に使う金属の性質や、使う桜の部位で変わります。小枝や蕾など、花に近い部位を使うと「桜色」に、樹皮を使うと、ベージュに近いオレンジ色「花葉色(はなばいろ) 」に、樹皮の内側にある芯材や初夏の葉を使うと、黄色を帯びた「淡黄色(たんおういろ) 」に染まります。

line up

サクラ色を生み出す、染師の知識と経験

革へサクラ色を落とし込む為に、色素を含む素材からこだわり
また、煎液(染液)の抽出に関しても、何度も工程を繰り返したり、1週間程度寝かせたりなどの工程を施します。
染師の経験と知識、そして色へのこだわりと、染色への愛情が自然なやさしいサクラ色を革へ落とし込みます。

サクラ色に染める

花の咲く前の小枝を手に入れたら、その日のうちに細かく刻み、色素を抽出します。小枝や樹皮などを細かくしたチップと水、少量の米酢を加えて火にかけて沸騰させ、120分ほどしたら布で濾しさらに3〜4回程煎液を抽出します。抽出した煎液を1週間ほど寝かすと、酸化されて赤みが増します。 色素は水溶性のため、革に定着させるためには媒染が必要です。黄色から桜色に染める場合はアルミ、茶色なら銅、灰色なら鉄を含む媒染を行ってから、沸騰した煎液に革を入れ、煎液をしみ込ませます。

染師

小室 真以人

1983年 福岡で生まれ、東京で暮らす。福岡県朝倉市秋月に越し、家業の草木染工房(工房夢細工)で草木染めに触れる。東京藝術大学美術学部工芸科で染織を専攻。在学中伝統技法を学ぶ傍ら、革の草木染めなどの新しい技術表現を模索。2007年 ホールガーメントニットを導入と技法を習得。2008年 自身のニットブランド「MAITO」をスタート。2010年 株式会社マイトデザインワークス設立。同年、東京都台東区上野の2k540に直営店を出店。2012年 東京都台東区蔵前にアトリエショップをオープン。

ボタニカルレザー®︎

"ボタニカルレザー®"は、化学染料を混ぜる草木染めとは違い、化学染料を使わない、植物だけで染め上げた正真正銘100%の天然染料のみを使用した「草木染め」で革を染めています。それがゆえに環境や人にも優しく独特なやさしい色合いが特徴であります。命ある色を染める草木染めは染料の濃度、工房の外と中の温度差、染めの時間、そして染める革の動かし方など様々な要素が複雑に組み合わさりその色を表すため、同じ染料で染めても色は違ってきます。また、原料となる植物や木は、今日と2週間後、今年と来年に伐ったものでも違います。つまり同じ色に2度と出会うことはないのです。いわば一期一会。それも草木染めの魅力の一つと言えるでしょう。

この革を纏う