泥染めは奇跡の模様

奄美大島泥染

泥染めとは、鹿児島県に属する奄美が世界に誇る伝統産業「本場大島紬」の染色法で、1300年の歴史があります。島に自生するテーチ木(学名:車輪梅)のチップを煮込み自然発酵させて作る染料と鉄分が多く粒子が細かく丸い奄美でも特定の地域に限られる泥により「黒褐色」に染められる革が「泥染めレザー」であります。伝統工芸の技術を残すべく革を染めるという新たな可能性を歳月を掛けて生み出された泥染めレザーは、化学染料とは違う深い黒と茶褐色の色合いや絞り柄など奇跡の模様・無二の個性を表現します。

奄美大島と泥染

手付かずの大自然が残る鹿児島県/ 奄美大島。
泥染は、沖縄本島からほど近いこの島で古くから行われてきました。全ての工程が島内で職人の手により行われる泥染は、島にとって重要な産業の1つとなっています。

潮風と肥沃な土壌から育ったタンニンの赤

泥染めは、島に自生するテーチ木(車輪梅)を使って染めていく草木染めがベースになっています。奄美大島で採取されるテーチ木は、強い潮風や肥沃(ひよく)な土壌の影響で濃度の高いタンニン酸を含んでいることから非常に染色に適しています。
※中心の赤みがタンニン。
※テーチ木は、1mほど残して切り出される為、
 7~8 年後にはまた染料として使用することができます。

赤土で深まる奄美大島の色

泥染めで用いる奄美大島の泥は粒子が細かく、丸く、自然界にある鉄分が豊富などの特徴があります。そして、自然界に存在する鉄分が豊富な赤土の土壌の為、たっぷり染められたタンニンと反応し 茶褐色から黒褐色へと変化していきます。この鉄媒染こそが、奄美特定の色を表現します。水田のようなところの地面を掘ってくぼみ状にし、周辺にある泥をたし入れ、鉄分の濃度を高めます。粒子が細かいのは微生物の作用によるもので、染めに使用する田は切り立った山裾にあり、山からミネラルを多く含む水が流れ込むことで、微生物の餌となり、活発に活動します。

line up

職人の手技と自然の力が生み出す褐色の模様

1300年の伝統を誇る本場奄美大島紬の染技法である泥染めを、熟練した職人の手技により革へ落とし込んだ奄美特有の黒褐色革。更に、あらゆる絞り染色技法を加える事により本来の革色×テーチ木による茶褐色×奄美の泥による黒褐色が織りなす模様は無二の個性を引き立てます。この模様柄も長年の経験や知識の積み重なりにより様々な柄に表現されます。

繰り返し手で揉み込む

泥染めをする革が好みの柄に染まるように、一点一点手作業で縛っていきます。職人の長年の積み重ねによって、ヒダを摘まんだり、折り込んだり、縛ったりと、染めの柄によってそれぞれ絞り方法を変えます。この、人の手による作業こそが無二の個性を表現し、奇跡の模様を生み出します。

縛り、折り込む職人の手技

泥染めをする革を好みの柄に染まるように、一点一点手作業で縛っていきます。職人の長年の積み重ねによって、ヒダを摘まんだり、折り込んだり、縛ったりと、染めの柄によってそれぞれ絞り方法を変えます。この人の手による作業こそが、無二の個性を表現し、奇跡の模様を浮かび上がらせます。

  • 1. テーチ木をチップ状に細かく粉砕

    島に自生するテーチ木を粉砕器を使って細かくチップ状にします。採取したテーチ木が乾燥する前にチップ状にし次の工程に入ることが重要です。

  • 2. チップを煮出す

    約600kgのチップ状のテーチ木を大釡に入れて、16時間以上かけて煮出します。沸騰が始まると工房内には煙とともに少し甘みのある独特な香りが漂います。
    ※燃料は前回炊き終えたチップを乾燥させ薪代わりに。

  • 3. 繰り返し煮る

    煮出したテーチ木のチップを釡から手動で引き上げます。
    その後、水を足して再度煮ます。

  • 4. 数日間かけて発酵・酸化させる

    煮出して抽出したテーチ木のエキスは、数日間寝かせて酸化させることで徐々に赤みを増していき、火入れから発酵、酸化まで1週間ほどかけて染料が完成します。
    染料は粘り気のあるとろみを帯び、独特な香りがします。

  • 5. 絞りの模様を作る

    泥染めをする革を好みの柄に染まるように、一点一点手作業で縛っていきます。職人の長年の積み重ねによって、ヒダを摘まんだり、折り込んだり、縛ったりと、染めの柄によってそれぞれ絞り方法を変えます。

  • 6. 石灰水で染料の濃度を上げる

    染色の濃度を上げるために石灰水(アルカリ)を用い、テーチ木の染料であるタンニンを中和させて染めていきます。
    石灰水がテーチ木のタンニンを結合させる接着剤の役割を担っています。

  • 7. 揉み込み染める

    素手でしっかりと揉み込み染色していきます。手を前後に動かし揉みこみ、染液を泡立てながら空気に触れさせて、揉みこんでは絞り、また揉みこむ。そして、染料を半分捨てては新しい染料を半分足すことで色の濃度を上げます。

  • 8. 泥を足でかくはんして揉み込む

    こもりの下にたまった泥を足で攪拌(かくはん)して、テーチ木で染めた革を揉みこむと、鉄分がテーチ木のタンニンと結合し、非常に深みのある褐色に染まっていきます。この一連の流れ(テーチ木で染める→泥で染める)の作業を染め具合によって何度も繰り返します。

  • 9. 川で洗い流す

    洗い場となっている川。
    泥で染色した革は、きれいな川の上流で洗い流します。泥の細かい微粒子は川の流水でないとなかなか洗いきれません。ゆったりとした流れの中で、丁寧に丹精込めて洗い流していきます。

  • 10. 乾燥させる

    川で洗った革は、奄美大島の大自然に囲まれた場所で清々しい自然の風に当てて乾燥させます。乾燥するとやっとte sahoの「奄美大島泥染」が完成します。

泥染師

肥後 純一

昭和の40年ごろに有屋の泥染め工場で見習いとして泥染めに触れる。本場奄美大島紬のコンテストにて、染め部門で数々の受賞を受ける。大島紬の染め以外にも、アパレルの染め依頼もこなし、泥染めのモデルとしても活躍する。泥染めのパイオニア。

この革を纏う